連鎖退職はなぜ起きるのか|同僚の退職で約7割の転職意欲が上がる

お役立ち情報

2026/11/01

1人の退職は、1人で終わらないことがあります。エース級の社員が辞めた数ヶ月後、同じチームから次々と退職者が出ていく。このような現象は「連鎖退職」と呼ばれます。背景には、退職が残ったメンバーの心理に影響を与える側面と、欠員による負担増が次の退職を呼ぶ構造的な側面の、両方があります。本記事では、調査データをもとに連鎖退職の仕組みを確認し、企業がどこで連鎖を止められるのかを整理します。経営者や人事責任者にとって、連鎖退職は「人事の問題」にとどまらず、事業継続そのものに関わるテーマです。

連鎖退職とは何か

まずは言葉の意味と、この現象の基本的な捉え方を確認します。

一人の退職が次の退職を呼ぶ現象

連鎖退職とは、特定の社員の退職をきっかけに、短期間に複数の社員が次々と辞めてしまう現象を指します。ドミノ倒しのように、一人の退職が次の退職の引き金になることから、こう呼ばれます。退職した本人だけでなく、残ったメンバーへの影響まで含めて捉えることが、この現象を理解する第一歩です。

心理的な伝播と構造的な連鎖の二つの側面

連鎖退職には、二つの異なる側面があります。一つは、同僚の退職が残ったメンバーの転職意欲を刺激するという「心理的な伝播」です。もう一つは、欠員による業務負担の増加が疲弊を生み、やがて次の退職につながるという「構造的な連鎖」です。両者は同時に進行することが多く、対策も両面から考える必要があります。

なぜ今、連鎖退職に備えるべきなのか

人手不足が続く中では、退職者の補充そのものが難しくなっています。欠員が長引けば、構造的な連鎖のリスクは高まります。つまり、採用が難しい時代ほど、連鎖退職の影響は大きくなりやすいということです。「辞めたら採用すればよい」という発想が成り立ちにくい今だからこそ、退職の連鎖を前提にした備えが求められます。

データで見る連鎖の実態:転職意欲はどう動くか

連鎖退職の出発点となる「心理的な伝播」は、調査データでも確認できます。

同僚の退職で転職意欲が上がる人は約7割

パーソルキャリアの調査機関「Job総研」の「退職に関する意識調査」によると、同僚の退職による影響で「転職意欲が上がる」と感じている人は約7割にのぼります(2025年調査)。さらに2026年の同調査では、「上がる派」が77.5%を占めました。同僚の退職は、多くの社員にとって他人事ではなく、自身のキャリアを見直すきっかけになっています。

残ることへの不安も66.1%

同じ2026年調査では、会社に残ることへの不安を感じる人も66.1%にのぼりました。同僚の退職は「自分も辞めてよいのではないか」という気持ちと同時に、「この会社は大丈夫なのか」という不安も広げます。安心材料がないまま不安だけが残ると、メンバーは会社ではなく外の選択肢に目を向け始めます。

業務量の増加による疲弊は43.2%

また同調査では、退職者が出た際の感じ方として「業務量の増加による疲弊がある」と答えた人が43.2%でした。これは、欠員による負担増が、すでに多くの職場で現実のものになっていることを示しています。心理的な動揺と業務負担の増加が重なることが、連鎖を加速させる条件だと言えます。

図: 同僚が退職したとき、残ったメンバーに起きること(出典: Job総研「2026年 退職に関する意識調査」)

退職が「選択肢」として認識されること自体が起点

これらのデータが示すのは、退職の連鎖が「不満の強い人から順に辞めていく」という単純な話ではないということです。身近な同僚が辞めることで、退職という行動そのものが「自分にもあり得る選択肢」として認識されます。その心理的なハードルの低下こそが、連鎖の起点となります。

欠員が次の退職を呼ぶ構造

心理的な伝播に加えて、欠員が放置されることで生じる構造的な連鎖にも目を向ける必要があります。

欠員の77.0%が補充されていない

パーソル総合研究所の「オフボーディングに関する定量調査」(2024年)によると、同僚の退職などで欠員が生じた組織のうち、欠員が補充されていない組織は77.0%にのぼりました。内訳は、「補充しなかった」が47.4%、「募集しているができていない」が29.6%です。欠員は一時的なものではなく、多くの職場で常態化しやすい状態であることが分かります。

残業の増加とバーンアウト

同調査では、欠員が発生すると、業務を引き継いだ後任と、その上司に共通して残業時間が長くなり、バーンアウト(燃え尽き)傾向が高まることも示されています。引き継ぎは一時的な負担で終わらず、補充されない欠員のしわ寄せが、特定のメンバーに集中し続ける構造があります。

後任自身の退職意向が高くなる

さらに同調査では、後任自身の退職意向が高くなることも示されています。つまり、欠員を埋めるために動いた人ほど、次の退職候補になりやすいということです。「欠員→負担増→疲弊→次の退職」という構造的な連鎖がここにあります。最初の退職への対応を誤ると、連鎖は組織の都合とは無関係に進んでいきます。

図: 同僚の退職などで生じた欠員の補充状況。77.0%が未補充のまま(出典: パーソル総合研究所「オフボーディングに関する定量調査」)

企業への具体的影響

連鎖退職が進んだ場合、企業にはどのような影響が及ぶのでしょうか。

生産性と品質の低下

メンバーが減り、残ったメンバーの疲弊が進めば、業務の生産性や品質は低下します。引き継ぎが不十分なまま担当者が交代すれば、ミスや対応漏れも増えやすくなります。欠員が常態化した職場では、「回っているように見えるが、実は綱渡り」という状態が続きます。

採用・教育の負担が積み上がる

退職が重なれば、その都度、募集、選考、入社手続き、教育といった採用・育成の負担が発生します。補充が追いつかなければ現場の負担が増し、補充のために採用を急げば教育の質が下がりかねません。負担の積み上がりは、残った管理職や人事担当者の疲弊にも直結します。

事業継続リスクにもつながる

帝国データバンクの「人手不足倒産」調査では、従業員の退職が要因となる倒産事例の増加が報告されています。特にキーパーソンへの依存度が高い中小企業では、数人の退職が事業の継続そのものを揺るがしかねません。連鎖退職は、人事部門だけの課題ではなく、経営課題として捉える必要があります。

自社でできる連鎖退職対策

連鎖退職は、二つの側面それぞれへの対策を組み合わせることで抑えることができます。

最初の1人を出さない

連鎖の起点は、最初の1人の退職です。退職の意思が固まる前には、残業の急増、欠勤の増加、アンケートでの意欲低下といった兆候が表れることがあります。その段階で上司が声をかけ、負担や不満の要因を解消できれば、連鎖そのものを未然に防げます。早期のフォローは、最も効果の大きい対策です。

欠員期間の負担を放置しない

それでも退職が発生した場合は、欠員期間の対応が第二・第三の退職を防ぐ鍵になります。業務を引き継いだメンバーの稼働状況と心理状態を重点的に見守り、負担が集中していないかを確認してください。あわせて、残ったメンバーへ状況と今後の見通しを丁寧に説明することも、不安の伝播を抑えるうえで有効です。

連鎖を防ぐためのチェックリスト

よくある誤解と注意点

連鎖退職への向き合い方について、現場で見られがちな誤解を整理します。

「退職は突然起きる」という誤解

退職は突然の出来事のように見えますが、実際には、その前に兆候が表れていることが少なくありません。「突然だった」と感じるケースの多くは、兆候を見取る仕組みがなかっただけだと言えます。勤怠やアンケートの変化を継続的に見ていれば、気づけるサインは存在します。

「1人辞めても採用すれば済む」という誤解

欠員の77.0%が補充されていないという調査結果が示す通り、採用すれば済むという前提は、現在の採用環境では心もとないものになっています。さらに、補充できたとしても、心理的な伝播は採用では止められません。退職への対応は「補充」ではなく「予防と初期対応」が中心であるべきです。

「辞めるのは不満の強い人だけ」という誤解

同僚の退職によって転職意欲が上がる人が約7割にのぼるという事実は、連鎖が「不満の強い一部の人」だけの問題ではないことを示しています。日頃は問題なく働いているメンバーも、きっかけ次第で動き出します。キーパーソンや問題社員だけを見ていればよい、という考え方は危険です。

SENTENO離職対策で「次の退職」の兆候を捉える

こうした兆候の把握とフォローを仕組み化するのが、離職対策サービス「SENTENO離職対策」です。

勤怠データとアンケートをAIが分析

SENTENO離職対策は、勤怠データとアンケート(サーベイ)の結果をAIが分析し、フォローが必要な社員を自動でピックアップしてお知らせします。残業の急増や意欲の低下といった変化を、上司の感覚だけに頼らず継続的に捉えられるため、欠員が発生したチームのメンバーなど、変化が起きやすい対象の兆候も見逃しにくくなります。

「誰に・どう声をかけるか」まで提案

兆候に気づいても、「どう声をかければよいか分からない」という壁があります。SENTENO離職対策では、AIが声かけの内容まで提案するため、人事専任がいない企業でも早期フォローの運用を回しやすくなっています。導入は勤怠システムとの連携とアンケート配信が中心で、専用アプリの利用は不要です。

料金

料金は従業員数に応じて個別にご案内しています。詳しくは資料請求にてご案内します。1人の退職が連鎖の起点になることを考えれば、最初の1人を防ぐ投資として検討する価値があります。まずは無料の「離職コスト診断」で、自社の離職損失額を試算してみてください。

まとめ

連鎖退職について、要点を振り返ります。

連鎖には心理と構造の二つの側面がある

同僚の退職で転職意欲が上がる人は約7割。さらに欠員の77.0%が補充されず、負担を担った後任自身の退職意向が高まります。連鎖退職は、心理的な伝播と構造的な負担増が重なって起きる現象です。どちらか一方だけの対策では不十分です。

止めるポイントは「最初の1人」と「欠員期間」

連鎖を止める実践的なポイントは二つです。第一に、兆候の段階でフォローし、最初の1人の退職を防ぐこと。第二に、退職が発生したら欠員期間の負担と不安を放置しないことです。この二点を仕組みとして回せるかどうかが、組織の離職リスクを大きく左右します。

出典

Job総研(パーソルキャリア)「退職に関する意識調査」https://www.g-soumu.com/articles/110353e5-07d8-4de1-86cb-af0b2185dd23

パーソル総合研究所「オフボーディングに関する定量調査」https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/offboarding.pdf

帝国データバンク「人手不足倒産」調査(引用:https://schoo.jp/biz/column/1989)

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