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人手不足の職場では、「なんとか回っている」状態が続いている企業も多いのではないでしょうか。しかし、回っているように見える裏側では、残ったメンバーの疲弊と、品質・安全水準の静かな低下が進んでいます。欠員は一時的な穴ではなく、放置すれば組織全体に影響を広げる経営課題です。経営者や人事責任者の中には「欠員は現場が何とかするもの」と捉えている方もいるかもしれませんが、データを見ると、その前提自体が成り立たなくなっていることが分かります。本記事では、調査データをもとに、欠員が常態化する職場で何が起きているのか、そのメカニズムと企業への具体的な影響、そして自社でできる対策を整理します。
パーソル総合研究所の「オフボーディングに関する定量調査」(2024年)によると、同僚の退職や長期休暇などで欠員が生じた組織のうち、欠員が補充されていない割合は77.0%にのぼりました。退職者が出ても、すぐに後任が決まるわけではないのが実態です。経営者や人事責任者が想定する以上に、「欠員がある状態」が長く続く職場は多いと考えられます。
未補充の内訳を見ると、「補充がなかった/しなかった」が47.4%、「募集しているができていない」が29.6%です。採用活動をしても人が集まらないケースに加え、そもそも補充に動けていないケースも半分近くを占めています。欠員の常態化は、採用市場の問題であると同時に、社内の対応が追いついていない問題でもあるのです。

図: 同僚の退職などで生じた欠員の補充状況。77.0%が未補充のまま(出典: パーソル総合研究所「オフボーディングに関する定量調査」)
かつては、退職者が出れば求人を出して補充するまでの数ヶ月をしのげばよい、という考え方が成り立ちました。しかし採用難の時代には、その前提が崩れています。欠員は一時的な穴ではなく、常態化しやすいものとして捉え直す必要があります。ここを誤ると、対策の出発点そのものがずれてしまいます。経営層と現場の間で「欠員はすぐ埋まる」という認識のずれがあると、負担を抱えた現場への配慮も遅れがちになります。まずは欠員が長引くことを前提に、業務量や人員配置を見直すことが現実的な対応です。
欠員が出ても、業務量そのものは減りません。退職者の担当していた仕事は、業務を引き継いだ後任や、チームを束ねる上司に寄せられます。とくに属人化していた業務ほど、引き継げる人が限られるため、負担は特定のメンバーに集中します。「誰かがやらなければならない仕事」が、残ったメンバーの肩に静かに積み上がっていくのです。上司自身も例外ではありません。マネジメント業務に加えて現場の実務まで抱え込むと、チームの状態を見守る余裕が失われ、問題の発見がさらに遅れるという悪循環に入ります。負担の集中は、個人の頑張りで吸収できる範囲を超えた時点で、組織のリスクに変わります。
前述のパーソル総合研究所の調査では、欠員が発生した組織において、後任と上司に共通して残業時間が長くなり、バーンアウト(燃え尽き)傾向が高くなることが示されています。短期的な繁忙と違い、補充の見通しが立たないままの残業は終わりが見えません。この「終わりの見えなさ」が、疲弊を深める要因になります。

図: 欠員が続く職場では、残ったメンバーの疲弊が蓄積していきます(出典: イメージ写真)
問題なのは、疲弊が表面化しにくいことです。残業時間の急増、遅刻や欠勤の増加といった変化は勤怠データに表れますが、日々の業務に追われる中では見逃されがちです。本人が限界を自覚したときには、すでに退職の意思が固まっていることも少なくありません。気づいたときには手遅れ、という事態を避けるには、変化を早い段階で捉える視点が必要です。
欠員の負担で疲弊したメンバーが退職すれば、欠員はさらに増えます。負担増が次の退職を呼び、その退職がまた負担を増やす。この連鎖が始まると、職場の状況は加速度的に悪化します。退職は1人の問題で終わらず、組織全体に波及するリスクとして捉えるべきです。
慌てて採用を進めても、受け入れる側の職場が疲弊していれば、新しく入った人が定着しない可能性があります。教育に時間を割く余裕がない現場では、新人の立ち上がりも遅くなります。採用の数だけを追っても、欠員の構造そのものは変わりません。

図: 欠員が負担増と次の退職を招く悪循環のイメージ(出典: パーソル総合研究所「オフボーディングに関する定量調査」をもとに作成)
この悪循環を断ち切るには、起点である「最初の欠員」を出さないことが最も効果的です。欠員が発生した後の対応にも意味はありますが、負担が連鎖し始めてからの立て直しには大きなコストがかかります。予防に力を配分する発想への転換が求められます。
疲弊した状態が続くと、確認やチェックといった「本来やるべき手順」が省略されやすくなります。その結果、ミスやクレームが増え、顧客対応の質も落ちていきます。熟練者が抜けた工程では、判断そのものの質も下がります。品質の低下は、欠員の影響が最も目に見える形で表れる部分です。
業種によっては、品質の低下はそのまま安全の問題になります。介護・医療の現場では利用者や患者の安全に、製造・建設の現場では作業者の安全や製品の品質に直結します。人手不足によるミスは、事故や行政指導といった、企業の信用を大きく損なう事態につながりかねません。欠員対策は、安全管理の一環でもあるのです。
さらに影響は事業継続にまで及びます。帝国データバンクの「人手不足倒産」調査(2025年)では、従業員の退職が要因となる倒産事例の増加が報告されています。とくにキーパーソンへの依存度が高い中小企業では、数人の退職が事業の継続そのものを揺るがします。欠員は人事部門だけの課題ではなく、経営そのものの課題だといえます。また、品質や納期の問題が取引先や顧客に及べば、企業の信用そのものが傷つきます。欠員の影響は社内にとどまらず、事業の根幹である「信頼」を静かに蝕んでいく点にも注意が必要です。
対策の第一歩は、欠員の影響を感覚ではなく数字と事実で把握することです。どの部署で欠員が続き、誰の残業が増えているのか。負担の偏りを把握できれば、業務の再配分や応援体制といった具体的な手が打てます。見えない負担は、対処のしようがありません。
欠員が発生した直後は、後任探しと並行して、残ったメンバーへの手当てを行うことが重要です。
退職者の業務を棚卸しし、引き継ぎ先と優先順位を決める
引き継いだメンバーの残業時間と業務量を確認する
一時的に止める・後ろ倒しにする業務を明確にする
上司が定期的にメンバーの状態を確認する場を持つ
補充の見通し(時期・方法)を現場と共有する
欠員対応と同時に進めたいのが、退職そのものを防ぐ日常のフォローです。残業の急増や欠勤の増加など、退職の前に現れる変化に早く気づき、上司が声をかける。この小さな積み重ねが、欠員の発生自体を減らします。欠員が出てからの対策と、出さないための対策は、両輪で考える必要があります。とくに欠員が続いている職場では、残ったメンバーの変化こそ注意深く見るべき対象です。欠員の穴を埋めている人ほど無理を抱え込みやすく、その人の退職は組織への打撃も大きくなります。フォローの優先順位は、負担の大きい人からつけるのが原則です。
採用は欠員対策の一部ですが、それだけでは不十分です。前述のとおり、欠員の77.0%が補充されていない現実があり、採用しても定着しなければ同じことが繰り返されます。採用の強化と並行して、「辞めさせない」取り組みに目を向けることが欠かせません。
短期の繁忙であれば、現場の頑張りで乗り切れることもあります。しかし補充の見通しが立たない状態が続けば、残業の増加とバーンアウトのリスクが高まります。頑張りに依存した運用は、結果として次の退職を招く危険をはらんでいます。
退職の申し出を受けた時点では、意思は固まっていることがほとんどです。その段階から引き止めや補充に動いても、できることは限られます。対策の主戦場は、退職後ではなく退職前、つまり兆候が現れる段階にあります。
SENTENO離職対策は、勤怠データとアンケートをAIが分析し、フォローが必要な社員を自動でお知らせする離職対策サービスです。残業の急増や意欲の低下といった変化を捉え、欠員が発生する前に手を打つための仕組みを提供します。人事専任がいない企業でも運用できる設計です。
変化の検知だけでは、現場の行動は変わりません。SENTENO離職対策は、フォローすべき対象の通知に加えて、「誰に・いつ・どう声をかけるか」までAIが提案します。分析結果の読み解きや、グラフとにらめっこする作業は不要です。欠員を防ぐための日常のフォローを、現場の負担を増やさずに回せます。欠員が発生した職場では、引き継いだメンバーの変化も継続的に捉えられるため、「次の退職」を防ぐ観点でも活用できます。最初の欠員を出さないこと、そして欠員が出た職場を見守ることの両方を、ひとつの仕組みで支えられます。
料金は従業員数に応じて個別にご案内しています。詳しくは資料請求にてご案内します。欠員が常態化する前に、まずは無料の「離職コスト診断」で、自社の離職損失額を試算してみてください。
欠員の77.0%が補充されないままになっている現実は、退職を「補充で解決する」発想の限界を示しています。欠員は残ったメンバーの残業と疲弊を招き、品質・安全の低下、さらには事業継続のリスクにまでつながります。だからこそ、対策の中心は退職後の対応から、退職そのものを防ぐ予防へ。兆候の段階で気づき、声をかける仕組みを持つことが、欠員の悪循環を断ち切る第一歩です。
パーソル総合研究所「オフボーディングに関する定量調査」https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/offboarding.pdf
帝国データバンク「人手不足倒産」調査(引用: https://schoo.jp/biz/column/1989 )
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